「コードを修正しようとしたら、関連するファイルが5つあって、全部手作業で直すのが面倒」——そんな経験はないですか。
AIにコード修正を頼んでも、ファイルをひとつひとつコピー&ペーストして貼り付けて……という手間が結局残ってしまう。ChatGPTやClaudeのチャット画面での開発補助は便利な半面、複数ファイルにまたがる変更や、コミットまでの一連の作業をつなぐのが苦手です。
この記事では、ターミナルから直接リポジトリ全体のコードを読み込ませ、AIと対話しながら複数ファイルを一括編集→Gitコミットまで完結させられるオープンソースツール「Aider(エイダー)」の使い方を解説します。インストールから実際のコマンド操作、実務での活用パターンまで、プログラミング経験が浅い方にも再現できるレベルで説明します。

Aiderとは?
Aider(エイダー)は、ターミナル上で動くオープンソースのAIコーディングエージェントです。2024年にPaul Gauthier氏が公開し、GitHubで3万スター以上を獲得している人気ツールです(2026年9月執筆時点)。
最大の特徴は「Gitと連携したファイル一括編集」です。作業したいファイルをAiderに読み込ませると、AIがリポジトリ全体のコード構造を把握した上で、修正案を直接ファイルに書き込み、Gitコミットまで自動で実行してくれます。
他のAIコーディングツールとの違い
| ツール | 動作環境 | 複数ファイル編集 | Git連携 | 無料利用 |
|---|---|---|---|---|
| Aider | ターミナル | ○(自動) | ○(自動コミット) | △(LLMのAPI費用は別途) |
| Claude Code | ターミナル | ○ | ○ | △(Claudeサブスク必要) |
| Cursor | エディタ(GUI) | ○ | △(手動) | △(有料プランで機能拡張) |
| GitHub Copilot Chat | エディタ(GUI) | △(限定的) | △(手動) | ✕(月額有料) |
| Continue.dev | VSCode拡張 | △ | ✕ | ○(自分のAPIキーで無料) |
Aiderは「CUIツール」であることが特徴で、エディタに依存しません。自分のAPIキー(Claude・GPT-4o等)を持ち込めるため、サブスクリプションではなく使った分だけの従量課金で利用できます。
Aiderのインストールとセットアップ
1. Pythonと pipの準備
AiderはPythonで動きます。Python 3.10以上が必要です。ターミナルで以下を実行して確認してください。
python3 --version # Python 3.11.x のように表示されればOK
2. Aiderのインストール
公式推奨のインストーラーを使います。
python3 -m pip install aider-install aider-install
上記でAider本体がインストールされます。インストール後は aider コマンドで起動できるようになります。
3. APIキーの設定
Aiderは自分のLLM APIキーを使います。Claude(Anthropic)またはOpenAIのAPIキーを取得して、環境変数に設定します。
# Claudeを使う場合 export ANTHROPIC_API_KEY=sk-ant-xxxxxxxxxxxxxxxx # OpenAI(GPT-4o)を使う場合 export OPENAI_API_KEY=sk-xxxxxxxxxxxxxxxx
毎回設定するのが面倒な場合は、ホームディレクトリの .bashrc や .zshrc に追記しておくと起動時に自動読み込みされます。
4. Gitリポジトリの準備
AiderはGitリポジトリ内で動作します。作業したいプロジェクトフォルダに移動し、Gitが初期化されていることを確認してください。
cd ~/myproject git status # 「On branch main」等が表示されればOK # まだGitがなければ: git init
Aiderの基本的な使い方
1. Aiderを起動する
プロジェクトフォルダで以下を実行します。Claude(Sonnet)を使う場合:
aider --model claude-sonnet-5
起動するとAiderのプロンプト(>)が表示されます。ここに日本語で指示を入力できます。
2. ファイルをAiderに追加する
編集したいファイルをAiderのセッションに追加します。
# 起動後のプロンプトで: /add app.py /add utils.py # または起動時にまとめて指定: aider app.py utils.py --model claude-sonnet-5
追加したファイルの内容がAIに読み込まれ、コード全体を把握した状態で会話できるようになります。
3. 自然言語で指示する
ファイルを追加したら、あとは日本語で指示するだけです。
> app.pyのget_user関数に、ユーザーが存在しない場合はNoneを返す処理を追加してください
Aiderがコードを分析して修正案を提示し、承認すると自動でファイルを書き換えてGitコミットまで実行します。コミットメッセージもAIが自動生成します。
4. 主要なコマンド一覧
Aider内では / から始まるコマンドが使えます。
・/add ファイル名: ファイルをセッションに追加
・/drop ファイル名: ファイルをセッションから除外
・/ls: 現在追加されているファイルの一覧を表示
・/diff: 直前の変更内容をdiff形式で確認
・/undo: 直前のコミットを取り消す(git reset –soft HEAD~1 相当)
・/clear: 会話履歴をリセット(トークン節約に有効)
・/exit: Aiderを終了
実務での活用例(Before/After)
活用例1: バグ修正を複数ファイルにわたって適用する
Before: エラーログを見てどのファイルに問題があるかを自分で特定し、ファイルを開いて手作業で修正。同じ関数が別ファイルにも定義されていた場合は両方直し忘れるリスクがあった。
After: Aiderに関連ファイルを全部追加してエラーメッセージを貼り付けると、どのファイルのどの行が問題かをAIが特定して一括修正。Gitコミットまで自動実行されるため、修正の見落としが減った。
活用例2: 既存コードに新機能を追加する
Before: 「このAPIエンドポイントにページネーションを追加したい」という要望があると、どのファイルを修正すべきか調べるだけで30分かかっていた。
After: Aiderにリポジトリのメインファイルを読み込ませて「注文一覧の取得APIにページネーション(page/per_pageパラメータ)を追加して」と指示。関連するルーティング・コントローラー・レスポンス整形の3ファイルを自動で修正してくれた。
活用例3: コードのリファクタリング
Before: 重複したコードをまとめたいが、影響範囲が広くて手をつけられなかった。
After: /add で複数ファイルを一括追加し、「この処理を共通関数に切り出して、各ファイルの呼び出し箇所もまとめて書き換えて」と指示。ファイル間の整合性を保ちながらリファクタリングを実行してくれた。
コードのリファクタリングについてはAIでコードをリファクタリングする方法でも詳しく解説しています。
うまくいかない時の対処法
【問題1】「ファイルが多すぎてトークン上限に達する」
Aiderに追加したファイルの合計サイズが大きいと、LLMのコンテキストウィンドウを超えてしまいます。
対処法: /drop で不要なファイルをセッションから除外する。大きなリポジトリでは、直接関係するファイルだけを絞って追加するのが基本です。/map-tokens コマンドで現在のトークン使用量を確認できます。
【問題2】「AIが意図しないファイルを変更した」
Aiderは変更前に「このファイルを修正します」と確認を求めますが、承認後に「やっぱりやり直したい」となることもあります。
対処法: /undo コマンドで直前のコミットを取り消せます。AiderはすべてGitを経由して変更するため、通常のGit操作(git log・git diff等)でいつでも変更履歴を確認・差し戻しできます。
【問題3】「日本語の指示が正しく伝わらない」
日本語で指示できますが、技術的な用語は英語で補足するとAIの理解精度が上がります。
例: 「ユーザー認証のミドルウェア(middleware)に、JWTトークンの有効期限チェックを追加してください」のように、日本語の説明に英語の技術用語を混ぜると指示が伝わりやすくなります。
【問題4】「API費用が心配」
Aider起動時に --no-auto-commits オプションを付けると、変更前に一度確認が入ります。また、/clear で会話履歴をリセットすると、次の指示から毎回クリーンな状態で送れるためトークン消費を抑えられます。Anthropicの無料枠やOpenAIの無料クレジットを活用してまず試してみるのがおすすめです。

本記事のまとめ
Aiderは「ターミナルから複数ファイルを一括編集→Gitコミットまで自動化」を実現するオープンソースのAIコーディングエージェントです。
| こんな用途に向いている | こんな場合は他ツールを検討 |
|---|---|
| 複数ファイルにまたがるバグ修正・リファクタリング | GUIエディタで作業したい(→ CursorやWindsurf) |
| 自分のAPIキーで従量課金したい | サブスクリプション管理が楽な方がいい(→ Claude Code) |
| Gitと連携した変更管理を自動化したい | VSCode拡張として使いたい(→ Continue.dev) |
| オープンソースでカスタマイズしたい | 大企業の支援・SLAが必要(→ GitHub Copilot) |
まずは小さなリポジトリで aider app.py と起動してみるだけで、AIとの対話型コーディングの感覚がつかめます。「AIにコードを書かせたいが、チャット画面でのコピペ作業が煩わしい」と感じている方に、ぜひ一度試してほしいツールです。
類似ツールの比較についてはAIコードエディタ比較(Cursor・Windsurf・Claude Code)もあわせてご覧ください。
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ターミナル上でAIとコードを対話しながら書く「AI駆動開発」の実践を解説した一冊。AiderとあわせてAIコーディングの全体像を掴むのに最適です。
