「画像を添付してみたけど、なんとなく使っている」「PDFを貼っても期待した回答が返ってこない」——そんな経験はないだろうか。ChatGPT・Claude・Geminiはすでにテキスト以外のファイルを受け取れるが、指示の書き方が曖昧なままでは、AIは的外れな回答しか返さない。
この記事では、画像・PDF・音声ファイルとテキスト指示を組み合わせる「マルチモーダルプロンプト」の書き方を、コピペで使えるプロンプト例と実務でのBefore/Afterを交えて徹底解説する。読み終えたその日から、AI活用の精度が一段上がるはずだ。
マルチモーダルプロンプトとは?テキストだけでは届かない精度がある
マルチモーダルプロンプトとは、テキスト(文字)以外の情報——画像・PDF・音声・動画など——をAIへの指示と組み合わせた入力のことだ。「マルチ(複数)+モーダル(感覚・入力形式)」が語源で、複数種類の情報を束ねてAIに渡すことを意味する。
従来のプロンプトはテキストのみだったため、「会議スライドの内容は…」「この写真には…」と、目で見ている情報をわざわざ文字に起こして説明する必要があった。マルチモーダルを使えば、その手間が一切なくなる。
具体的には次のような使い方が可能だ。
・画像+テキスト指示:売上グラフのスクリーンショットを貼り付けて「このグラフのトレンドと異常値を分析して」と依頼する
・PDF+テキスト指示:契約書PDFを添付して「リスク条項を箇条書きで抜き出して」と依頼する
・商品写真+テキスト指示:商品の写真を見せて「ECサイト向けの商品説明文を150字で書いて」と依頼する
マルチモーダルAIの基礎知識についてはマルチモーダルAIとは何か|画像・音声・動画を活用するビジネス実践ガイドで詳しく解説しているので、まずそちらを確認してほしい。
【2026年7月時点】主要ツールの対応状況
| ツール | 画像 | 音声 | 動画 | |
|---|---|---|---|---|
| ChatGPT(GPT-4o) | ○ | ○ | ○(音声モード) | △(一部プラン) |
| Claude(Sonnet / Opus) | ○ | ○ | × | × |
| Gemini(Advanced) | ○ | ○ | ○ | ○ |
| Copilot(Microsoft 365) | ○ | ○(OneNote/Word連携) | △(Teams連携) | × |
ChatGPTとClaudeは画像・PDFの添付が実用レベルで安定しており、ビジネス用途ではこの2つが現時点で最もおすすめだ。ファイルの添付方法の詳細は生成AIにファイルを読み込ませる方法|PDF・Excel・画像の添付と業務活用ガイドを参照してほしい。
画像を使ったプロンプトの書き方
画像添付で最も多い失敗は「指示が短すぎること」だ。「この画像について教えて」と一言だけでは、AIは何を求められているのか判断できず、表面的な説明しか返さない。「何を・どの観点で・どんな形式で」を明記するだけで、出力の質が劇的に変わる。
1. 画像の内容を分析・説明させる
グラフ・資料・写真などを渡して分析させる最もシンプルな使い方だ。
指示が曖昧なパターン(NG):
この画像について教えて
これではAIが何を求められているか分からず、「グラフには棒と折れ線があります」程度の説明しか返ってこない。
改善後のプロンプト(OK):
# 添付の売上グラフを分析してください。 ## 分析してほしいこと - グラフ全体が示すトレンド(上昇・下降・横ばいのどれか) - 異常値・注目すべきポイント(3点以内) - 考えられる原因の仮説(各1~2文) ## 出力形式 箇条書き。経営層への報告資料として使えるレベルの表現で。
「分析してほしいこと」と「出力形式」を分けて書くことで、AIは迷わず必要な情報だけを返せるようになる。
2. 画像を比較・評価させる
複数枚の画像を見せて、比較・採点させる使い方だ。デザインのABレビューや競合サイト分析に特に効果を発揮する。
# 添付の2つのランディングページデザイン(A・B)を比較してください。 ## 評価軸(各5点満点で採点) - ファーストビューのCTA視認性 - モバイルでの読みやすさ(文字サイズ・余白) - 訴求メッセージの明確さ ## 出力形式 比較表 + 「申込率向上に有利なのはどちらか」と理由を3行以内で。
採点軸を決めておくと、毎回同じ基準でデザインをレビューできる。担当者が変わっても評価がブレない。
3. 画像から文書・コピーを生成させる
画像の視覚情報をもとに、文書・コピー・説明文を生成させる使い方だ。商品写真から商品説明文、現場写真から作業報告書を作るときに有用だ。
# 添付の商品写真を見て、EC向けの商品説明文を作成してください。 ## 条件 - ターゲット: 30代女性(通勤・オフィス利用がメイン) - 文字数: 150字以内 - 訴求ポイント: 写真から見て取れる特徴を最大限に活かす - 口調: 丁寧かつ親しみやすい - 冒頭の1文でメリットを伝える構成にする
「ターゲット・文字数・口調・構成」の4つを固定するだけで、生成されるコピーのばらつきが大幅に減る。
PDFや文書ファイルを活用するプロンプトの書き方
PDFはビジネス文書の標準フォーマットだ。ChatGPTやClaudeに添付するだけで、長文の内容を瞬時に処理できる。ただし、何を抜き出してほしいかを明確にしないと、AIは全体の要約しか返さない。
1. 長文PDFを要約・構造化する
「要約して」だけでは、読者にとって重要な部分が抜け落ちることが多い。必要な確認事項を箇条書きで指定するのがコツだ。
# 添付の契約書PDFについて、以下の項目を確認してください。 ## 確認事項 1. 免責事項・損害賠償の上限額 2. 解約条件と違約金の有無 3. 機密保持の範囲と例外事項 4. 自動更新の有無と更新前通知期限 ## 出力形式 - 条文番号を引用しながら、各項目の内容を2行以内でまとめる - 通常より不利な条件・リスクが高い項目には【要注意】と付記する
確認項目を番号で固定することで、毎回同じチェック項目を漏れなく確認できる。法務担当がいない中小企業でも、一次スクリーニングが可能になる。
2. 複数のPDFを横断して比較する
ChatGPTおよびClaudeは、複数ファイルの同時添付に対応している(ファイル数・サイズ上限あり)。これを使うと、複数の提案書・見積書・仕様書を一気に比較できる。
# 添付の3社の提案書(A社・B社・C社)を比較してください。 ## 比較軸 - 提案内容の独自性(1~5点で評価) - 費用対効果の明確さ(費用根拠・ROI試算の有無) - 実績・実施体制の具体性 - 納期・スケジュールの現実性 ## 出力形式 4行×3列の比較表(Markdownテーブル形式) 最後に「総合評価が最も高い会社と選定理由」を3行以内で記述
担当者が3社分の提案書を読んでまとめるのに2時間かかるところが、このプロンプト1つで10分以内に比較表が出来上がる。
実務での活用例(Before / After)
【ケース1】営業資料のフィードバック
Before:部下が作成したPowerPoint資料をメールで受け取り、口頭でフィードバック。1件あたり15分かかる。内容の抜け漏れにも気づきにくい。
After:資料のスクリーンショットをClaudeに貼り付けて以下のプロンプトを送信。
# 添付の営業提案資料を評価してください。 ## 評価してほしい観点 - 顧客の課題が最初のスライドで明確に提示されているか - 提案内容(解決策)と課題のつながりが論理的か - ROIや導入後の効果が数字で示されているか - 次のアクション(商談・デモ依頼など)への誘導があるか ## ターゲット: 製造業の30代部長職(非IT系) ## 出力形式: 良い点3つ・改善点3つ・優先度の高い修正1つ
2分で具体的なフィードバックが完成。修正指示もそのまま部下に転送できる。
【ケース2】競合サイトの定期分析
Before:競合他社のWebサイトを開き、特徴・キャッチコピー・UI構成を自分でメモしながら比較。3社で30分以上かかる。
After:競合サイトのスクリーンショットをGeminiに添付し、次のプロンプトを送信。
# 添付の競合3社のトップページを比較してください。 ## 評価軸(各5点満点) - ターゲット顧客の明確さ(誰向けか一目でわかるか) - ファーストビューの訴求力(CTA・キャッチコピーの強さ) - 信頼獲得要素(実績数・顧客ロゴ・受賞歴の有無) ## 出力形式: 比較表 + 自社サイトへの示唆を2行
比較表が5分以内に完成。定期的に実行することで、競合の動向変化も素早く把握できる。
【ケース3】請求書・見積書の転記作業
Before:取引先から届く請求書PDFを開き、会社名・請求金額・支払期限をExcelへ手入力。20件で1時間以上かかる。
After:ChatGPTにPDFをまとめて添付して次のプロンプトを送信。
# 添付の請求書PDFから以下の情報を抽出してください。 ## 抽出項目 - 請求書番号 - 請求元会社名 - 請求金額(税込) - 支払期限 ## 出力形式: CSV(1行目はヘッダー) ## 注意: 読み取れなかった項目は「不明」と記載する
CSV形式で出力されるので、そのままExcelに貼り付けるだけ。転記ミスもゼロになる。
マルチモーダルプロンプトで失敗しやすいパターンと対策
【失敗1】画像・PDF品質が低すぎてAIが読み取れない
スマホで斜め撮りした書類写真や、解像度が極端に低い画像は、AIが内容を正確に読み取れない。特にテキスト情報が重要な場合は顕著だ。
対策:書類・スライドはスキャン/PDF変換した上で添付する。どうしても写真しかない場合は「画像の一部が読み取れない可能性があるため、不明な箇所は『判読不能』と記載して」と一言添えておく。
【失敗2】「分析して」一言だけで指示が終わっている
「この資料を分析して」だけでは、AIは何を求められているか判断できず、当たり障りのない一般論しか返さない。
対策:分析の観点・出力形式・用途(誰が見るか)の3点を必ずセットで指示する。本記事のプロンプト例をテンプレートとして流用するのが最短ルートだ。
【失敗3】大量ページのPDFを丸ごと渡して後半が無視される
AIにはトークン(処理できる情報量)の上限がある。100ページを超えるPDFを一度に渡すと、後半の内容が事実上無視される。
対策:「〇ページ目から△ページ目を読んで」と範囲を指定するか、必要なページだけ抜き出して添付する。全体の要約が必要な場合は「目次と各章の冒頭1ページだけ添付」という方法も有効だ。
【失敗4】機密情報を含むファイルをそのまま外部AIに送っている
顧客情報・未公開の財務データ・開発中の製品仕様などを含むファイルを、そのまま外部のクラウドAIにアップロードするのは情報漏洩リスクがある。
対策:社内のAI利用ガイドラインに沿って、ファイルに含まれる情報の機密レベルを確認してから使う。機密性の高い文書は、数字や固有名詞を伏せ字にしてから貼り付ける方法もある。AIセキュリティの全体的な対策については、姉妹サイトセキュリティマスターズ.TOKYOで詳しく解説している。
本記事のまとめ
マルチモーダルプロンプトを使いこなすと、「AIへの説明コスト」が大幅に減り、出力精度が一段上がる。本記事のポイントを整理しておこう。
・画像添付時:「何を・どの観点で・どんな形式で」の3点セットで指示する
・PDF活用時:確認事項を番号付き箇条書きで具体的に指定する
・複数ファイルの比較:比較軸と出力形式(表形式など)を必ずセットで伝える
・品質面:低解像度画像・大容量PDFは事前に最適化する
・セキュリティ面:機密レベルを確認してから外部AIに渡す
今日から使えるプロンプト例を本記事からそのままコピーして、自分の業務に当てはめてみてほしい。まずは「画像1枚を渡して分析させる」小さな成功体験を積むことが、マルチモーダル活用の第一歩だ。
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